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演劇:複雑な関係①

 無名画家といえばいくらか聞こえはいいが、つまりいくら絵を措いても決して「売れない」画家プレーズ・ダンプリユーが、一見親切そうでその実、ひどく業突く張りの中年女アリアーヌから、彼女がスキーに出かける二週間の間だけ、かなりふっかけられた「貨貸料」でそのアパルトマンを借りたのは、実はプレーズの、というよりはむしろ彼がそのヒモとしてぶらさがっているモデル女ジュヌヴィエーヴに深い陰謀があってのことであった。

 ジュヌヴィエーヴはプレーズをヒモにしておく資金を、そのモデル稼業だけにかぎっていたわけではなく、当然週一度の約束のあるカルリエという旦那からまき上げる「賃貸料」でカバーしていたのだが、そうした三角関係をもっと有効な複雑な関係に切り変えて、自分とプレーズとの間に永久的平和を築くために、ジュヌヴィエーヴは、自分の旦那であるカルリエの「少なからずパア」な娘ローラとプレーズとを結婚させることを思いつき、その計画実行のためプレーズの「家柄」を示す舞台装置としてこの「豪華鉄筋マンション」のアパルトマンを選んだのであった。

 今日プレーズはお目当てのカルリエ夫妻を招待して娘のロ-ラと見合いをし、二週間以内に結婚にまでもっていくというのがその企みで、プレーズはそのために花やケーキやトリ料理や新鮮なカキなどを、なけなしのポケットをはたいて取りよせておいたのである。
 「先祖代々住んでいた」はずのプレーズのこの家に召使が一人もいないのはおかしいというので、急きょ派出家政婦会に頼んだのはいいが、それに応じてやって来たのは、大きな眼鏡をかけた、まるで山だしの田舎娘マリイであった。プレーズは早速断わって追い返そうとするのだが、次々と届く今日の見合いの席のための、「小道具」に払う金が不足してしまい、マリイから小銭を借りるはめに追いこまれ、マリイはひとまずプレーズの家に奉公するという結果になったのである。

 そこでプレーズがマリイに女中教育をしているところに、早くもカルリエ家が訪ねてくる。さて、いよいよプレーズの一世一代の出番となるのだが、なにしろ「先祖代々住みついた」どころか一、二時間前に借りたばかりなので万事勝手が分からず、書斎のドアと思ったのが、秘密のアルバイトで彼が売り歩いているほうきの一杯入った押入れだったり、皆で乾盃しょうと思って酒を注ごうとすると、それがみんな空瓶だったりということから始まって、最悪のことがいろいろ重なって、結局この見合いは表面上惨胆たる結果に終わるのだが、怒り狂って娘を連れて帰って行く妻を見送ったカルリエは、自分の条件さえ聞いてくれれば、こっちもどうせパアの娘を持つという弱みのあることだから、妻をなんとか口説いてこの縁談をまとめてみょうと言うのである。

 その条件というのは、プレーズが風なにかこうグッとくるヌード画を描くということが一つ、もう一つはプレーズのこの部屋を明日午後だけ情婦とのランデヴーの場所に貸して欲しいということであった。すでに「成功」を前提として、12万フランもの先付小切手を切ってしまったプレーズは、万一の決済がつかなければ「刑務所所入り」なので、やむをえず「涙をのんで」承諾してしまうのである。というのはカルリエの「情婦」とはつまり自分がヒモであるジュヌヴィエーヴ自身のことだからである。