Histoire de Française

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眠り薬①

 ジャクリーヌ・ジローは田舎の家に越して来て半月にもなるのに、夫に内緒でひそかに不倫の恋を楽しんでいる相手のジャンが慰めに来てくれないので、焦々と眠れない夜をすごしている。
 もちろん仕事の忙しい彼女の夫も、週末にしかここへは帰って来ないからである。彼女はその焦々を鎮めるために睡眠薬をグッと飲み干し、ベッドにもぐりこんで寝てしまう。

 そこへ近くの街道で自動車が故障して途方にくれたムッシュウ・マジュールが人家を探し探しして三キロも歩いた末、ようやくここにたどりつく。

 声をかけても誰もいない様子なので、彼は家の中に入りこみ自動車修理工場に電話するが、そのとき電話のそばにあったコップの水を、それはジャクリーヌが睡眠薬をたっぷり滴らせた水とは知らずに飲み干し、同じようにもうろうとなってベッドにもぐりこんで寝てしまう。
 そこに一日早く予定を切り上げたジャクリーヌの夫、ロベール・ジローがやって来て、自分の細君のベッドに見知らぬ男が一緒に寝ているのを目撃してしまったので、話は厄介なことになる。

 ロベールは怒り心頭に達してジャクリーヌを叩き起こし、この男は一体誰なのだときいても、睡魔のとりことなっているジャクリーヌは、ちょっと目をはなすとまたぐっすりと寝こんでしまう有様で返事をするどころの騒ぎではない。一方クロード・マジュールの方も同様で、こっちも睡魔にとりつかれているので一向に要領を得ない。
 一体どこで二人は知り合ったのか? というロベールのきわめてまともな質問に、ジャクリーヌは「こんな人どこの誰だか知らない」と言い、クロードは「実は私は通りがかりのもので」と、二人ながら本当のことを言うのだが、この状況の中ではとても「本当のこと」とは思えないのは当然のこと。

 ついにロベールは猟銃をつきつけてクロ-ドをおどすが、クロードは睡魔には勝てずジャクリーヌと抱き合うようにしてベッドの中で寝こけてしまうのである。
 翌朝ジャクリーヌは目覚めてもまだ頭がばんやりしていて、昨夕のことは何一つおぼえていないので、夫のロベールから話の結着をつけようといわれても一体なんのことか分からなかったのである。その点はクロード・マジュールも同じことなのだが、夫のロベールにとっては二人のそういう態度がいちいち頭にくるわけである。

 やがて事情が分かりかけてきたジャクリーヌは、夫の連れてきた友人とばかり思いこんでいたクロード・マジュールが、見知らぬ通りがかりの人間だと分かると、急に自尊心を傷つけられたように感じ、クロードをこの家から追い出してしまおうと、猟銃をもち出して脅かしたりする。だがそのとき、クロ-ド・マジュールは、ふと一計を思いうかべるのである。

 彼はジャクリーヌが昨夕のことを覚えていないのを幸い、思わせぶりな言葉の数々を重ねて、どうやら昨夕自分とジャクリーヌが「深い仲」になったばかりかそのときジャクリーヌはむしろ「積極的」であったというようなことを匂わせて、ジャクリーヌの心にもしやという不安の念をかき立てたのである。