Histoire de Française

Histoire de française

フランス人の生き方

フランス人の興味

フランスの演劇

LINK

演劇:La Mamma①

 シシリア近郊カターニアのマニアーノ家の古風な窓からは、オリーブ畑や教会の尖塔や古い家並が見える。
 この平和で静かなたたずまいの村に、今ひとつの旋風が巻き起ころうとしていた。

 マニアーノ家の未亡人ロザリアの長男アントニオが、三年間にわたるローマでの役人生活を終えて、このたび故郷に錦を飾ることになったためである。

 シシリアからローマへ出稼ぎに出かけて行く人の数は多いが、アントニオほど出世の早い男はいない。
 そして彼のあるところ、常にその腕に抱かれたいと願う女たちが雲霞のごとく集るほどの美貌をアントニオは備えている。まさに夫亡きあと女手一つでマニアーノ家の屋台骨を支えて来たロザリアの自慢の種であった。

 うっかり表を歩こうものなら、上役の信任厚いアントニオの口添えで、なんとかその役人にとり入って甘い汁を吸おうとする連中が母親のロザリアにうるさくつきまとい、おちおち好きな散歩も出来なくなった。ある日突然訪ねて来た神父の口から、この上はもう「神さまに一刻も早くアントニオの命を天上にお召し下さることを祈るのみ」と言われると、彼女の心もおだやかではいられなくなる。

 アントニオが村に帰ってからというもの、教会に集る女どもはいっせいに彼に見惚れてしまい、せっかくの神父のありがたいお説教も馬耳東風。このままでゆけばアントニオのために心身ともに堕落する女の数は知れないだろう、というのが神父の心配であった。

 ロザリアは神父と心を合わせてその問題を解決するために、かねてから息子の嫁にと心にかけていた、村の有力者であり金持ちの公証人でもあるビュリジの娘パルバラと、アントニオを一緒にさせる計画をすすめることにした。しかし世の中は「案ずるより産むが易し」のたとえの通り、当のアントニオは母親たちよりも一足早く、一目惚れしたパルバラと婚約し、娘の両親の許可さえ得て帰って来たのである。

 次男のアルドは母親の立身出世主義に反発したのか、都へ出て栄達をのぞむより、静かな農村でひっそりと百姓仕事をしたいと思っている。しかし母親はマニアーノ家に生まれた男がそんな夢のない生活をして一生を過ごすことに賛成するわけもなかった。